少年期のロック体験から、大学レコーディングスタジオ構築、そして『ポピュラー音楽の社会経済学』へ。
1954年生まれの私は、ビートルズをデビューからリアルタイムで聴いた世代より少し若い世代です。病気で寝ていた時、ラジオから流れてきたレッド・ツェッペリンに激しい衝撃を受け、以来英米のロックを浴びるように聴いて育ちました。
しかし、1980年代以降のJ-Popの定着には次第に違和感を抱くようになりました。かつての日本人アーティストが抱いていた「海外に匹敵するものを作りたい」という気概が薄れ、国内市場でのみ売れればよいという内向き志向が顕著になったからです。2010年頃にはヒットチャートをAKB48とジャニーズが独占し、均一なメロディをユニゾンで歌うガラパゴス化が進んでしまいました。
対照的に徹底してグローバル市場を意識したのがK-Popでした。J-Popが海外で受け入れられにくい最大の要因は「リズム」にあります。4拍子の1拍・3拍という「オモテ拍」を強調する日本的リズムは、ブルースやジャズ、ロック、海外ポップスのバックビート(裏拍)と決定的に異なります。いくらテンションコードや複雑な転調を駆使しても、リズムの骨格が日本的であれば世界標準には届きません。
1990年代末、大学にレコーディング・スタジオをつくる機会を得て、アンプ、ドラム、Yamaha 02R、DAW(ProTools)等の機材選定から自ら行いました。さらに2000年には学生とインディーズレーベル(OSU DMF)を立ち上げました。 そこで直面したのは、ミュージシャンが生活できない旧態依然とした音楽ビジネスの搾取構造でした。この実体験から誕生したのが、学術的決定版『ポピュラー音楽の社会経済学』です。
高増 明 編(349ページ)
音楽産業の構造、サブスク、著作権、K-Pop・C-Popまで全10章で徹底解剖。
「良い声・良いギターの音の物理学的定義」「バックビート論の妥当性とリズムのため」「ロック衰退と復活の可能性」「アメリカにおけるカントリーヒットとトランプ支持」「音楽生成AIがもたらす影響」などについて、ご意見のある方はぜひご連絡ください。